あのトレーダーって上手いの?
あのトレーダーって有名だけど上手いんですか?
この質問、ツイッターをやっているとよく聞かれます。今までに10数回は聞かれたような気がします。その上で毎回、相手が誰でも、こう答えてました。
わかりません。
これは、ぼくが無能ということ横に置いても、「ツイッターの情報だけでこんなことを判断することは不可能」だからです。具体的な戦略独自性や、定量的な指標もなく、そんな無責任なことは言えないからです。例えるならば、以下のような例に近いです。
あの隣町のやつ、スッゲー足早いぜ!多分宇宙一早い!!
へー、長距離?短距離?何mを何分で走るの?
そんな細かいことは知らねぇ!ただ、うちの先輩もあいつ褒めてたし、フォームとかめちゃすごいらしい!
このような会話で、特性や定量的なデータもなく、その人がいかに優秀な走者か判断することをどう思うでしょうか。日々の会話の中で、他人の意見に流されていることはないでしょうか。
日次○○○万円!ってくらいだから、すごいじゃん!
日次収益で図りたいという気持ちはわかります。金額は簡潔な指標です。ただし、欠けている要素は多く存在します。
例えば、10万円を100万円にする人と、1000万円を1200万円にする人はどちらが上手いのでしょうか。収益額でなく収益率を見るべきではないでしょうか。
その時のマーケット環境に対して、とったリスク量は適正だったでしょうか。流動性やカウンターパーティーリスクは加味したでしょうか。定量的なリスクリターン比率はどうでしょうか。時間軸を共通化したらどちらが上なのでしょうか。何勝何敗で勝率何割!ってそれは、果たしてトータルのパフォーマンスはプラスなのでしょうか。
最低限、戦略の独自性とトラックレコード(収益率)が開示されてないと話にならないよ。
細かいことをいってたら始まらないじゃないか
上手いか下手か!はっきり決めてくれ!
決められません。
というより、自分で決められるようになってください。
金融リテラシーなんてものは、平たくいうと自分で考えられる力をつけることです。
Googleですら、過去のWelq問題のような検索汚染を通じて、YMYL (Your Money Your Life)という考え方を示しています。これは、「将来の幸福、健康、経済的安定、人々の安全に潜在的に影響を与えるページ」には高い権威性を求めるという意味の検索品質ガイドラインです。
つまり、それだけ世の中の情報が汚染されていて、リスクを孕んでいるということです。権威性を持ち、客観的なデータを読み解いていくことで、自分で判断することが重要であると言うことを意味します。そもそも、各人の目標リターンや許容リスクについて、どこまで真剣に考えるかからが勝負です。
だから、ぼくはこう言うんです。
お前のインデックスを持て、と。
ドヤヤヤァ…
インデックス(指標)はダウや日経のような、株価指数だけを指しているものではありません。リターンであれば収益率の計算方法、リスクであれば標準偏差やVARのようなリスク計測手法そのものも「指標」です。
また、バリュー投資家であればバリューインデックス、ヘッジファンドであればその戦略に応じたヘッジファンドインデックスと比較する必要があるでしょう。そういった適切な評価基準をもち、自分の投資戦略に適合できるかが重要となります。
BotterやEA使いならば複数戦略の組み合わせをどのように分散、リスク管理するか、マーケット環境に適合しているかを判断する指標が必要になります。
そういった、みなさん自身のインデックス(指標)を身につけるべく勉強を続けてみてはいかがでしょうか。
定量的なデータに保証はあるのか?
最初の話に戻りますが、ネット上で示されている収益性の根拠の多くは、第三者的な保証ありません。早い話、いくらでも改ざんできるでしょう。100個平行して走らせたうちの、たまたまバカ勝ちした一個を見せてるのかもしれません(サバイバル・バイアスと言います)
さすがにこれはわかる。でもどうするの?
これは機関投資家でも同じ問題が生じていて、特に情報開示の少ないヘッジファンドでは顕著です。そこで、実際のファンドでは第三者機関(アドミニストレーター)にてファンドの時価総額を別途計算させ、収益率が適切か検査させています。
また、その総合的な運用プロセスが正しいことを、監査法人に監査させています。早い話、虚偽報告させない、持ち逃げさせない、詐欺させない仕組みが必要です。
そんな面倒くさいこと、やってらんないじゃん。
でもこんなの、人のお金をもらうビジネスとしては当たり前のチェックだよ。それすらも必要ない客だと、なめられているのでは?
まとめ
上記を読んで、上手いトレーダーというものを簡単に判断する気になるでしょうか。
投資と言うか、お金のリスク・リターンに関する判断というのは、どこまで稼いでも一生つきまとうものだと思います。死ぬまで。
トレード手法だ、金利だ、テクニカルだといったことよりも、より本質的な考えと判断基準(インデックス)を持つことの重要性を、考えてみてはどうでしょう。
私は、私のインデックスを毎日研究します。皆さんもぜひ考えてみてください。
追記
何から勉強したら良いのか分からない… ソニックさん
指標を持つためにはどういう部分から学ぶといいのかをお聞きしたいです。 おにぎりさん
こういったコメントを頂きました。ありがとうございます。
正直なところ、自分が資産運用について学び出したのは15年以上前なので、今から学ぶ人に適正な道筋を示せるかというと自信がないのですが、以下は一つの基本例になると思います。
- 目標リターンをたてて、実績リターンと比べること
- リスクについて分類し、納得すること
- マーケットの動きに上の2つを照らし合わせ、自分なりの水準感を持つこと
1.は、投下資本に対する収益率をまずは見る習慣をつけてください。一年で100万円が110万にできたなら、年率+10%です。時間軸は年率換算した方が、他の金融サービスや名目金利と比較しやすくて便利です。
2.リスクは多様な種類と尺度があります。市場の価格変動リスクについては、基本は標準偏差から初めていただければ結構だと思います。その他、カウンターパーティーリスクや流動性リスクについても、自分なりに何段階かのランクを目安として持っておくと判断が明確になります。
3.が最も重要なんですが、この3要素を組み合わせると「このマーケットの変動で、これだけのリスクをとってこのリターン水準…これでイキってるの?」っていう観点が生まれます。結局、リスクの張り方が上手いかどうかで勝負が決まります。張るタイミングもそうですし、張るフィールドがもっと重要ですね(この辺はうちの先輩の記事の方が詳しそうなので、お任せします)
このリスクコントロールの水準は、株であれ為替であれ債券であれ、あらゆる投資活動において同じです。就職活動や起業だって基本同じです。身についたなら、一生の財産になると思います。
YMYL (Your Money Your Life) で思い出しましたが、自分は若い頃健康に無頓着で仕事に集中していた時期があり、体を壊して入院したことがありました。その際医師から、「あなたの健康はあなたが守ろうとしない限り、社会の誰も守れません。医師にも不可能です」と言われたことが心に残っています。
少なくともGoogleからみて、その “Life” と同等に自己防衛が必要なジャンルとして “Money”があるということの意味は、重いと思っています。特に、暗号通貨についてネットで調べるようになり個人の投資事情に詳しくなってその思いは強くなりました。皆さんも皆さん自身の資産を守ってください。
具体的に読むといい本とか資格とかはまた思いついたら更新したいと思いますが、今日はこの辺で。
コメント
指標を持つためにはどういう部分から学ぶといいのかをお聞きしたいです。
何から勉強したら良いのか分からない…
自分のインデックスを持つために推奨される書籍等ありましたらぜひよろしくお願いします。
幾つでも構いません。
分かりやすかったです。
追記でのご回答ありがとうございます。
書籍の紹介等、これからも更新を楽しみにしております。
おにぎりさん、
わかりやすかった君さん、
鎌倉より伝わる投資を受け継ぎし者(!)さん、
ソニックさん、
ありがとうございます。投資については、ぼく自身もこれからも学び続ける身ですので、お互い引き続き頑張りましょう。
取引戦略の多くは複素平面上の目的関数最適化問題として扱われます。
なので基礎として
工学のための複素解析入門
をお勧めします。
また、上記に加えて、
海外のマスターファイナンスの講義資料を探してみるのも大切です。
バナッハ空間
コーシー空間
コーシー=リーマン方程式
など、高頻度取引戦略を構築するのに必須のトピックです。しかし、本を読んでいるだけでは身に付きません。
また、高頻度取引の構築を中心に考えますと、
抽象測度、ヒルベルト空間、再生核ヒルベルト空間上の汎関数の同定も大切です。
そのため、ルベーグ=ラドン=ニコディムの定理を理解することが必須だと言えるでしょう。
従いまして
関数解析
代数トポロジー入門
をお勧めします。
そして最後に、一般的な取引戦略構築には理論物理学の深い理解が必要であるため、
複素多様体理論、代数幾何学、くりこみ、共役場理論、ゲージ理論、その他を潰していくことをお勧めします。
よって
趣味で量子力学
をお勧めします。
良さそうな書籍と言えばこれくらいでしょうか?
…ネタなので本気にしないで下さい…
書籍選びに自信ニキさん
(某院の数理科学研究科の方かな…?)
やはり理論物理学、特に相対性理論や素粒子物理学など学習すると取引戦略に色味をつける事が出来るかと思います。
相対性理論は、集合位相微分幾何学リーマン幾何学を学んでおくと正しく理解できると思います。相対性理論はwald本がオススメです。(最近ブラックホールの撮影が成功された事ですし、流行に乗れます。)
なお、某電話帳は理論を知ることはもちろん、防御力攻撃力を高める事ができるので一石二鳥感はあります。
素粒子物理学であれば、やはりpeskin本でしょう。本の厚さもちょうど良く枕の代わりになり非常に良本です。最終的にはPolchinski本まで理解できると完璧ですね。
理論物理学は美しさが求められます(と個人的に思います)。アートである理論物理学の学習を通して、芸術的な運用戦略を作り出す、そんな事に寄与できるのではないかと思います。
深い見識に敬服しました。
紹介される本から,物理に対する造詣の深さを感じます。
理論物理学には美しさが求められる、本当にその通り…!その通りです……!!!!
理論を学び(無論、物理に限りません)、真理を追求する「姿勢」を確立しましょう。
人生はもちろん、資産運用もArtになること間違いなしです♪でわでわ!
ムカついてきたので何冊か真面目に推薦します。
(日銀のレポートとハルの鈍器は有名なので外しました)
まずは心構えから。
1.なぜ専門家の為替予想は外れるのか(富田公彦)
人間不信になりましょう。
次に歴史を知りましょう。
2.数理ファイナンスの歴史(櫻井 豊)
不遇の天才バシュリエから現代までの流れが大まかに掴めます。
こちらもおすすめです。なんと無料で読めます(講義資料でしょうか?)
3.金融と数学
http://www.math.ritsumei.ac.jp/crest/mathfinance%5B10.10%5D.pdf
流れを踏まえたら、次は実践的な技術を身に付けていきましょう。
3.から分かるように、現代の資産運用業界はとても広い事が分かります。
若い学生さんなら専門のコースに進みましょう。
東京工業大学には関係する部門があるらしいです。
1989年の時点で理財工学というタイトルで取引コストを考慮したポートフォリオ構築について出版された教授がいました。
20代過ぎてるおっさんは独学です。
和書->洋書の順に紹介していきます。
洋書のが充実してますので、やる気のある方は和書は飛ばしていきましょう。
4.計量ファイナンス分析の基礎(ファイナンス・ライブラリー)
色々勉強してから読むとよくまとまってるなあ、と感心させられます。
この1冊を気に入った方は
“ファイナンス・ライブラリー”シリーズで基礎は抑えられますので、まとめて購入してはどうでしょう。安いですし。
ここからは洋書です。
6.
The Mathematics of Financial Derivatives: A Student Introduction (English Edition)
Wilmottさんの本は直感的でわかりやすいです。
この本は古いですが、三部作が1つにまとまってる上に数値計算用の疑似コードも付いているためとてもお買い得です。お勧めです。
7.A Primer For The Mathematics Of Financial Engineering, Second Edition (Financial Engineering Advanced Background Series)
全体的な数学の復習にどうぞ
8.Computational Finance Using C and C# (Quantitative Finance)
プログラミングのテキストです。
C#なのは私個人の好みです。
もっと一般的なのが欲しい方はこちらをどうぞ
9.Numerical Methods in Finance and Economics: A MATLAB-Based Introduction
Matlabです。便利です。
しかも最近は2万円以下とお得です。
Octaveと呼ばれるほぼそのままのフリーソフトもあります。
Pythonは有名ですが、数値計算の実装となると少し厳しい(2.7の話です)上に私の知識不足もあり、紹介ができません….
紹介は以上です。
ここまで抑えれば、Twitterのプロが何を言ってるかはわかるようになりますし、”俺のインデックス”に必要な要素が見えていることでしょう。
具体的な取引戦略(”俺のインデックス”)構築にあたっては研究論文を漁ることお勧めします。
ポイントは”HFT”、”Trading Strategy”等で検索しないことです。
何故ならば、多くの場合バックテスト結果には何らかの祖語(というよりねつ造…?)が見つかるからです。悪意の有無は知りません。
一見すると何ら関係のない産業分野の論文を当たってみましょう。
分野は異なるのに、定式化された問題はそのままエキゾチックオプションな事が結構あります。
長文失礼しました。
とりあえず統計という漢字が読めるようになった方は
”
まずはこの一冊から 意味がわかる統計学 (BERET SCIENCE)
https://www.amazon.co.jp/dp/4860643046/
”
がおすすめかなと思います。
数式もでてきますがなんとか食らいついていけるレベルですし、意味がわからなくてぶん投げてもガラスが割れないくらいの重みと厚みです。
逆に数学得意とかの人にはかなり物足りなく突っ込みどころも多いものなので、本当の入門のための入門のためのルビくらいの内容です。
商材屋への憎しみだけで記事が書けるって素晴らしいですね。
訂正)
(×)Twitterのプロが何を言ってるかはわかるようになりますし
(〇)Twitterの自称プロがどれだけ無知で愚かなのかわかるようになりますし
統計について紹介し忘れていました。
10.ファイナンスのための計量分析
名著です。この間3円で投げ売りされてましたね(買いましたw)
全て学部レベルの数学を習得済みであることを前提に書きました。
数学…?って方はまずはこちらを。
11.経済数学入門の入門 (岩波新書)
数式が殆どないのに、投資で使われる数学を直感的にイメージ付きで短く説明してくれる本です。
図書館で借りれます。
数値計算について8,9を紹介しましたが、その前提知識として線形代数を日本語で復習しておいた方がよいかもしれません。
というわけで、
12.プログラミングのための線形代数
確か、これは著者のHPでPDFが配布されていたような?(できれば買ってあげてください)
沢山紹介しましたが、全てを読む必要はありません。
目次から単語を拾い、全体像を把握し、その上で知らないトピックを潰していく感じで十分だと思います(独学勢は)
P.S
定量的な取引は5つのパーツから成り立ちます。
1.アルゴリズム-数値計算の事です
2.分析-統計を使った因果推定の事です
3.データ-ノイズを含んだデータの前処理の事です。
4.モデル-確率モデリングの事です。格好よく言うとプライシングですね。
5.最適化-汎関数最適化の事です。
これら5つの道具を組み合わせることにより、ノイズのあるデータから価値ある情報(α)を引き出すことが可能となるのです。
つまり、”俺のインデックス”ですね。
これさえあれば大抵の事には対応できるようになります。(削除された記事のアレを含む)
養分の皆さん、Twitterのプロ(苦笑)には立場があるorただの無能のどちらかなので、フォローしていても無駄です。
アマチュア研究者(雇われてない、という意味合いで)として生きましょう。