(この記事は今週の仮想通貨マーケット「XRPの流通枚数?流通枚数の考え方とは」(2019年1月27日)の続きです)
話題になったニュース
今週話題になったニュースの一つに、Cryptoデータベンダーの”Messari” を率いるRyan氏が発表した以下のレポートがありました。
「XRPのmarket capは本来 $6.9 billionであり、レポートされている現在の金額は、約48% 過剰 である」
原文リンク
XRPのロックアップ状況やその売り圧力については、仮想通貨マーケットの経験がある方であれば聞くことの多いテーマかと思います。
その上で、今回はこのMessariが、その他のインデックスベンダーやパッシブファンド関係者に、Market Capを修正することを推奨した、というものでした。 (Bloomberg-Galaxy, MVIS CryptoCompare, Bitwise, Bitwise’s 10 Large Cap Crypto等)
この後、Ryan氏個人やその家族に対する脅迫があったとRyan氏はツイッターで発言、波紋を呼ぶこととなりました。
I want @Ripple @bgarlinghouse @MonicaLongSF @CoryTV @JoelKatz @warpaul to denounce any $xrp community threats against my family. I’m going to the fbi and local police after THREE calls. Ensuring our family doesn’t get swatted.
I’m not going home until it’s publicly stated.
— Ryan Selkis (@twobitidiot) January 25, 2019
脅迫ってオイ
仮想通貨だから多少はね。
ここで話題にあげたいのは、どっちが正しいとかよりも、そもそもこの流通枚数ってなんだろうと言う点です。
これはオタクわかる!
CoinMarketCapで毎日見てたから!
Circulating Supply っていう方!
そだね。CoinMarketCapのような仮想通貨のマーケット情報を計算しているサイトには、必ずMax Suplyであったり、Circulating Supplyであったりといった。供給に関する定義がある。この場合議論になるのはCirculating Supplyになる。
原則として、Max Supplyが今後のマイニングを考慮した理論上の全ての供給量である一方、このCirculating Supplyは現在のマイニングや発行体の事情による流通量を示しています。
ここで強調したいのは、Circulating Supplyもかなり多くの仮定を置いて計算せざるを得ない理論値であるということです。一つの基準に固執することは、本質的な流通量や時価総額を見失う可能性があると考えています。
流通枚数を計算する目的
そもそも、なんでそんな複雑なことするんや??
1億枚配る!!っていったら1億枚でええやん!
上で言ったように、仮想通貨はマイニングを通じて時間をかけて発行されるものが多い。かつ、XRPのようなロックアップといったような特殊事情を持つ通貨も多い。これを考慮しないと、
- 市場規模やプロジェクト規模を考える上での「時価総額」
- いざ価格を動かしうる「売買圧力」
この二つを見間違える可能性があるということだね。実はこれ、既存の株式や債券だって同じことが言えるケースもあるんだ。
株式には浮動株と言う概念があります。これは、全体の発行額のうち、「役員や関連会社が保有して、市場に流通しない株」を除いたものを指します。一般的に、この浮動株比率は上記の時価総額や売買圧力の考慮のため、株式インデックス等でもウェイト付けに考慮されることが多いです。
また債券市場でも、発行体である中央銀行が流通市場で買い入れる債券や、地方金融機関等が満期保有目的で保有しているものなど、極めて流通しにくい債券があります。これらも同様に、債券インデックスでも考慮されます。
さっきのさ、時価総額っていうのはあれでしょ?
500億枚発行しました!でも運営は499億枚持ってます!
1枚1円で買われたから、時価総額500億円〜〜〜!!!
みたいなのは困るってこと。
一番わかりやすいのはそういうことだね。
TradingViewのTotalデータとか、みんな大好きBTCドミナンスとかを見る上でも実は考慮しなくてはいけない。
(みんなこういうの全然気にしてなかったけどね…わし、細かいから気にしててな…)
2の売買圧力ってなんや!
さっぱりわからん!!
2はもっと実務的な話で、僕らは価格について議論したいから、
- どの時点で売買板にどれだけ並びうるか
こそが最も知りたい情報ってことなんだ。
あー、「将来の売り圧力〜〜〜」とかって言われるやつのことね。
そう。本来市場が効率的なら、そういった情報も全部入って現在の価格が成立し売買されるはずなんだけれど、そんなことは株式市場でもほぼない。
今の流通枚数や将来の流通枚数の変化の情報は、実は価格予想を考える上では当たり前に重要な話になる。早い話、発行しまくったらインフレになるでしょ。
日銀が!!!
円を刷って!!!
ハイパーインフレ!!!!
わからんけど
全部、政府が悪い!!!!!
Messari (OnChainFx) の算出している流通枚数
ここで一つ、今回話題に上がったMessariの運営するコイン情報サイト、”OnChainFX“の算出について少しだけ触れたいと思います。
下が、OnchainFXのランキング画面です。
Y2050?なに?新型のグラボ?
これ、Messariのロジックに基づいた「2050年の流通枚数で計算したMarket Cap」なんだよね。
2050年て…30年後?????
どんだけガチホする気やねん。
実際持つわけじゃないよ。。
これは「流通枚数はどの通貨も個別の基準で変化していく」ということを、ある長期の点を軸に見たらこうなる。ってことだと思う。
例えば面白いんだけど、このY2050の予想流通枚数だと時価総額4位にステラが入る。また5位にはなんとGrinが入る! まだ全然発行してない通貨だけど、ここに入るんですよ。
ほー。こうやって横比較できるのは面白いね。
でしょ!?
この変化っていうのは実質的に、各コインのインフレカーブを示しているんだよ!!
それでね!!!それを使えば各通貨の金利のカーブを考える上でもね……!!!
アッこれ絶対わからんやつだ
長くなりそうだし、これはこの辺でいいね。
(残念…)
まとめ
結論としては、流通枚数の考え方は基準や時間軸によって大きく変わるし、何が正しいってもんじゃないと思います。
株式市場や債券市場でも難しい概念ですし、個別の通貨の話というより、マーケット全体を柔軟に考えることが必要だと思います。
- 「時価総額」や「売買圧力」を考える上で「流通枚数」は重要。
- 価格予想の上でインフレ率は当然考慮すべきだが、市場は効率的でない。
- Messariの例のような、将来時点の流通枚数を推定するアプローチもある。
- 流通枚数は、マーケット全体に対し柔軟に考えるべきテーマ。
ではまた来週〜
過去記事のトピックも勉強になるから、見てみてね!
コメント
流通枚数とは
①リッチリストというもので確認できる
②リッチリストは全ての通貨に存在している
③②CMCはこれを基に掲載している
という認識で合っていますか?
ミリさん
ありがとうございます。CMCの流通枚数はhttps://coinmarketcap.com/methodology/に記載があります。
以下の通り、CMCのチームが調査をするもので各通貨の特徴(ロックアップなど)に合わせて調整しています。
リッチリストは上位保有者を表してるものですが、より詳細に分析して作ってると考えるべきだと思います。
Circulating Supply is the best approximation of the number of coins that are circulating in the market and in the general public’s hands. We have found that Circulating Supply is a much better metric than Total Supply for determining the market capitalization – Coins that are locked, reserved, or not able to be sold on the public market, are coins that cannot affect the price and thus should not be allowed to affect the market capitalization as well. The method of using the Circulating Supply is analogous to the method of using public float to determine the market capitalization of companies in traditional investing.
Circulating Supply is verified by our team through communication with the project’s team. We ask for details including but not limited to the initial distribution, private allocations, locked addresses, team-controlled addresses, and addresses containing portions of the supply allocated for future use. We examine the project’s blockchain and distribution table to determine the best approximation of what is freely circulating in the market based on the information provided. Once the information is verified, circulating supply is usually updated in real time by using relevant block explorer APIs.
Note: Circulating supply may not be calculated for cryptocurrencies listed on less than 3 exchanges due to the outsized influence of these volumes on the cryptocurrency price and market cap.